ShopSenseショッパーインサイトコラムでは、私たちが日頃実施しているネットワークカメラと動体検知技術を使った顧客行動の分析内容を紹介しながら、どのように活用していくのかを毎回テーマを決めてお伝えしています。

【第19回】小売の科学
海外事例:Herb Sorensenの記事より第2回

(2010年10月22日)

前回のコラムでは、ショッパーを買い物時間と購入数別に分類し、中でも「即買いショッパー(Quick-tripper)」が今後の小売業の展開に重要な意味をもたらすという話をしました。今回は「ショッパー分類」、「購入商品の種類」、「陳列場所」を掛け合わせてセグメント化し、注目すべき商品は何か、ショッパー分類と店舗の小型化にはどのような関係にあるかを説いていきます。

 

 

The Big Heads and the Long Tail

マーケットセグメント(購入者) セグメント別
カテゴリー 即買い 買い足し 買い溜め
飲料(ノンアルコール) 30% 30% 33% 全てのマーケット
セグメントに共通
パン/ケーキ 13% 19% 35%
スナック菓子 14% 18% 21%
健康食品・化粧品 14% 11% 14%
雑貨 15% 13% 13%
飴/ガム/ミント 18% 14% 11%
タバコ 11% 8% 4%  
冷凍食品 4% 23% 47% 買い足し、買い溜め
ショッパー用
乳製品(冷蔵) 1% 20% 70%
野菜・果物 6% 11% 68%
朝食食品 5% 9% 21%
クッキー/クラッカー 7% 11% 17%
アルコール飲料 8% 10% 15%  
精肉/魚 0% 5% 47% 買い溜め
ショッパー用
キッチン用品 2% 8% 28%
紙/プラスチック用品 2% 8% 25%
調味料/漬物 2% 7% 25%  
缶詰食品 1% 4% 16% 買い溜め
ショッパー用
スープ 0% 4% 15%
ハム/チーズ 1% 4% 15%

表1.1

 

表1.1をみると、この調査が行われた店舗では「買い溜めショッパー」中心の店舗展開をしていることがわかる。同様の小売店舗が多く、即買いショッパーの考慮が欠如しているとSorensenは指摘しており、店舗は90%の来店客のニーズを満たすような2〜3,000個の商品に焦点をあてるべきだとも述べている。特に、全てのショッパーが、目的の商品、中でもプレミアムブランド・高品質な商品・新鮮な商品にすぐにたどり着ける「便利さ」に対価を払うという考え方にたち、その「便利さ」を追求するアプローチも行わなければならない。

 

現状、一般的な小売店舗で扱う商品は30,000〜50,000種類であり、ひとつの商圏が扱う商品の種類は100万個を超す。しかし、顧客一人当たりの年間購買数はたったの300〜400種類。店舗の扱う商品種類数と大きく乖離している。しかも、そのおよそ半分が毎週もしくは毎日リピートして買う商品である為、年間を通して買う種類は少ない。事実、小売店舗の売上の約20%は、全商品のうちの80種類で占めている。例えば、牛乳やバナナなどの商品がスーパーマーケットのトップセールスを競っている状態だ。このような商品は「ビッグヘッド」と呼ばれ、それ以外の幾千個の商品は「ロングテイル」と呼ばれている。残念ながら、小売店舗では「ビッグヘッド」も「ロングテイル」も分類されずに散在して陳列されているのが現状である。

 

Heads You Win

この「ビッグヘッド」と「ロングテイル」という分類は小売業の商品管理手法において最も重要な分類であるとSorensenは言う。アマゾンなどのオンライン店舗は、有名で売れ筋の本(ビッグヘッド)も扱うが、それだけに特化することなくニーズの少ない本(ロングテイル)も数多く抜け目なく扱うことで利用者を増やしていった。ただし、実店舗では売り場面積も限られていることからこのビッグヘッドを活かすことが重要になる。しかしながら、先に述べた通り、小売店の陳列レイアウトをみると、まるでビッグヘッドを隠したがっているのではないかと思われるような陳列の仕方をしているとSorensenは言う。ビッグヘッドとロングテイルを何の区別もなく陳列し、結果としてロングテイルが数多く並びビッグヘッドがどこにあるのか分かりにくい状態になっているのは、ショッパーが必要とする商品に辿り着くまでに時間がかかり、イライラさせる結果となる。特に、今言及している、(小売店に影響をもたらす)すぐに商品を見つけて購買したい「即買いショッパー」を考慮していない点でいうと、売れ筋であるはずのビッグヘッドの売上を下げる事にもなり、両方にデメリットをもたらしてしまう。

※ここでは実際の陳列図を見ると、ビッグヘッド商品が、入口から最も離れた店内奥に置かれていたり、見つけにくい陳列になっている。全てのショッパーが通る入口付近にビッグヘッドを置くなどの工夫をすればいい事を暗に示しているのだろう。

 

The Communal Pantry

「近場の店舗で週3回以上即買いするショッパーが多い」という事実は、近場の小売店舗が、新鮮で高品質なものを扱い、近隣住民の「共有食糧庫」化していることを指している。世界をみても、インドではおよそ96%が家族経営の小さな店舗で買い物を済まし、ウォルマートの進出が著しいメキシコでも、人口の4分の3は今でも近所にある小さな店舗へ高頻度で来店している。冷蔵設備も買い溜めする資金もある欧州でさえも、小売店舗が「共有食糧庫」化しているのは、生活様式や時間の使い方の変化が関係している。今や「今すぐ食べる」、「移動中に食事する」といった限られた時間の中で軽食するという食習慣が主流となり、消費者は新鮮で品質の高い食品を求めるようになった。この変化がまさに「即買いショッパー」というグループの購買行動に繋がっており、頻度が高く来店し、必要なものを必要なだけ買うという購買行動は欧米であっても南米であっても、顕著にみられる傾向だとSorensonは指摘している。高所得者であっても低所得者であっても、そのような小さな店舗は地域の共有食糧庫としているのだ。以前はこのような小さな店舗は大手の小売店舗と違い、定価販売だったり新鮮さに欠けていたりしていたが、最近では特売を実施したり品質も担保できるようになり、以前と比べ変化してきている。価格の面では低所得者に、品質の面では富裕層にリーチ出来るこれらの小さな店舗が最近市場で伸び始めてきたのは当然のように思える。

 

ここまでみると、日本のコンビニエンスストアがまさにSorensenの言う「共有食糧庫」の役割を果たしているのではないだろうか。週2〜3回もしくは毎日、ペットボトルのドリンクやおにぎり、お弁当などを買うという行動は「今すぐ食べる、移動中に食べる」という習慣そのものであり、購入点数は少なく、買い物時間も短い。南米や欧州だけでなく、日本もこの形態の店舗は定着してきているように思われる。しかし、日本の大型のスーパーマーケットがこの即買いショッパー論を取り入れているかというと、コンビニエンスストアとはっきりと住み分けするかのように逆の形態を取っているのが現状だ。

 

 

今回は、即買いショッパーに着目しながら、購買者の変化に対応し売上拡大をおさめている店舗に関して述べてきました。次回はその逆である大型店舗がどのように即買いショッパー向けに展開できるかをお届け致します。

 

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