ShopSenseショッパーインサイトコラムでは、私たちが日頃実施しているネットワークカメラと動体検知技術を使った顧客行動の分析内容を紹介しながら、どのように活用していくのかを毎回テーマを決めてお伝えしています。

【第27回小売の科学】
海外事例:Herb Sorensenの記事より第3回(最終回)

(2011年1月7日)

Sorensenコラムの最終回です。前回のコラムではビッグヘッドとロングテイルという商品分類法と、店舗の商圏の変化と店舗小型化について説明しました。今回はショッパー分類と商品分類に基づいた店舗のデザインについてと、買い物時間の効率について説明していきます。また、最終回のまとめとしてこれからのショッパーインサイトについて最後に触れていきたいと思います。

 

Layered Merchandising
ショッパー分類として、「即買い」「買い足し」「買い溜め」をあげましたが、このセグメントにそって店舗をデザインすることが重要です。理想を言えば、全てのショッパーが満足する売り場を作りたい所ですが、限られた環境と予算の中でそんな桃源郷のような店舗を作るのは不可能です。では、ショッパーが満足する店舗を効率的に設計するには何に着目すればよいのでしょうか?Sorensenは、「即買いショッパーも違う日には買い溜めショッパーになる」と述べています。つまり、同じショッパーでもその日は急いで欲しいものを欲しいだけ買うが、週末には洗剤やレトルト食品など買い溜め用の買い物をする、ということです。これに対応するには、Layered Merchandising: 階層化販売方法」という方法で店舗をデザインすることを推奨しています。

 

≪階層化販売方法≫
階層化販売方法は、「どのショッパーでも(セグメントによらず)入口からレジまで出来るだけ手短に買い物が出来るよう、簡単かつ論理的に商品を配置・陳列する」ことを実現します。「店舗のなかに店舗を作る」感覚で、其々が「自分の為に作られた店舗だ」と感じるような店舗を作ることです。店舗の入り口に立った時に、ショッパーたちが求める商品がどこにあるのか「直感的」に分かる状態をつくりだすのです。その際に前回述べたビッグヘッド(即買い+売れる商品)とロングテイル(ニーズは少ないが息が長く売れる商品)の分類を応用し店舗を下記のようにデザインします。

@.「即買いショッパー」用のエリアを入口から一番近い所に設置し、ビッグヘッドを陳列。入店からいち早く商品を手に取りレジ行ける導線を作る。

A.@のエリアより離れるが、入口から直感的に分かる距離に「買い足しショッパー」の求める商品を陳列。そこからまたそのままレジに行ける導線を作る。

B.広く商品を求める「買い溜めショッパー」向けに、そのままもしくは1を通り買い溜めコーナーに行く。その後にそのままレジまたは、2のエリアにも行ける導線を作る。

このように、カテゴリーごとのショッパーが効率よく自分の求める商品を見つけ購入出来る道筋を作るのです。

【図1】

 

Spending Faster
「時は金なり」の言葉はビジネスに共通した認識ですが、いざ購買現場になると、「買い物客を長く滞在させた方が売上があがる(実際は無駄な時間しか生み出していない)」という認識があるようです。ビッグヘッド商品を店舗の奥に配置し、“店舗で宝探しをさせて滞在時間を長くさせる方法”はかえってショッパーを苛立たせ、店舗に悪い印象しか残しません。Sorensenのリサーチによると買い物時間全体の20%は商品を選んでいる時間に使われており、残りの80%はお目当ての商品を“探す”といった非生産的な時間にあてられているという結果がでています。事実、即買いショッパーは買い足しや買い溜めショッパーより分単位での消費ドルが高く、これは短い時間の中で欲しい商品を効率的にみつけ、店内を回遊せずに買い物を済ませている事を表しています。買い物を楽しむ人がいる半面、面倒くさい雑用のように感じているショッパーも存在する事を考えると、効率的に買い物をしている指標としての「ドル/分」は小売業の戦略にとって重要であり、この数値を用いて店舗レイアウトを改善する余地はまだあるとSorensenは考えています。

【グラフ1】

 

Dual Chaos
商品が多様化しているように、“ショッパーの特徴”も多岐に渡ります。この“多様化する商品”をひとつのカオスとすると、“多様化するショッパーの特徴”は第2のカオスと言えます。ショッパーマーケティングにおいて大事なのは「限られた店内オペレーションでこの2つのカオスをマッチングさせることだ」とSorensenは指摘しています。とはいえ全ショッパーの需要に店舗デザインをそれぞれオプティマイズすることは現実的に不可能なので、「即買い」、「買い足し」、「買い溜め」の3ショッパータイプそれぞれが効率的に買い物が出来るような店舗デザインや陳列をすることが小売業ができる最善策となるのです。

ここで最も重要になってくるのが、ショッパーの意識やデモグラフィックでもなく、彼らの“行動”そのものです。確かに細かく分けたターゲット層にアプローチできる広告やメディア戦略においては、セグメント別のニーズを分析することは必要不可欠ですが、毎日状況が変化する店舗で同様の戦略を打つのは現実的に非常に難しいものです。また、Sorensenは文中に「態度や意見は重要なインサイトにはなるものの、ショッパーの買い物行動とは確実な関連性がない」と指摘しています。これからのショッパーマーケティングは、店舗内外で起きている種々の細かい変化に左右されないショッパー行動をデータ化し、その指標をもとに商品陳列やオペレーションを設計すること、さらにその設計を定期的にチェックすることが重要です。このようなショッパーの行動指標を「大河の流れ」ととらえ、定性的かつ定量的に俯瞰して買い物を分析する手法が今後の主流になると考えています。

店舗において商品は買ってもらう事が最終ゴールです。Dr. PeppperやSeven Upで有名なAlexander “Sandy” Swanはこう言っています。「私の商品を買うのが800万円のBMWを乗り回している60歳の男性だろうが、ボロボロのフォルクスワーゲンで友達と一緒に来店したピアスだらけのギャルだろうが、どうだったいい。一番重要なのは彼らが商品を買ってくれることだ。」

 

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